天台宗からのお知らせ
 
◆天台座主猊下新年ご挨拶
天台座主 半田 孝淳

 明けましておめでとうございます。本年が、皆様にとりまして良い年になりますよう心より御祈念申し上げます。

 旧年、比叡山では法階継承の最も重要な古儀のひとつである別請広学豎義が六年ぶりに行われました。そして新探題に大樹孝啓大僧正が、また新已講に叡南覚範大僧正が、更に新擬講に菅原信海大僧正がご就任になられましたこと、御同慶に堪えない次第でございます。

 日本は、先の世界大戦で、原爆が広島、長崎に投下され、多くの人命が失われました。そのことを私は忘れることができません。

 一昨年四月、チェコ共和国の首都プラハにおいて、オバマ米国大統領が「核廃絶」を初めて訴えられ、同年のノーベル平和賞を受賞されましたが、昨年九月に米国は四年ぶりに臨界前核実験を行ったことが明らかになりました。

 オバマ大統領が究極の目的として掲げる核廃絶は、一方で核抑止力保持という形を見せ「理想と現実」の乖離は埋まらず、人類は未だに核兵器の脅威にさらされています。

 更に、私たちの未来を脅かすものに、地球温暖化、エネルギー不足、食糧問題、麻薬汚染などがあります。それらは、今の私たちの安全を脅かすばかりではなく、富める国と貧しい国との間に大きな差別が生まれています。

 それは、現代社会が、神仏にかわって経済の繁栄を最高の規範としたためだと思われます。その結果、人々が物の豊かさを平等に享受するのではなく、富の偏在と差別の増長を生むことになってしまったのは、誠に皮肉なことと言わねばなりません。

 人間は、協力し合わなければ生きて行けません。社会で生きるということは、それぞれに役割分担をするということです。自分を陰になって支えてくれている人々、社会、自然があってこそ、私たちのいのちがあることをもっと自覚すべきであると存じます。

 高祖、宗祖のみ教えを体し、一隅を照らすという一灯を高く掲げて、新しい年に臨みたいと存じます。皆様のご多幸を祈念し、新年の御挨拶といたします。

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