天台宗について

法話集

No.9お彼岸について

 暑い夏もすぎ、ようやくすごしやすいお彼岸のころとなりました。春の彼岸、秋の彼岸と年に二回の彼岸会がありますが、「暑さ寒さも彼岸まで」ということばが示す通り、春には漸く寒さも遠のいて花だよりもちらほら聞こえる頃、秋には夏の暑さも和らいで涼しい風が心地よい頃が彼岸会です。お彼岸は七日間ありますが、その中日は春分の日・秋分の日といって太陽が真西に沈むのに因んで、阿弥陀様の西方浄土に向かって手を合わせ、後生の安楽を願ったものです。
 彼岸とは仏の世界、此岸とは私たちが四苦八苦する迷いの世界です。いうならば、彼岸は遠く、此岸はなれ親しんだ世界ですが、でも、「これでいいのだろうか」とふと考えることがありはしませんか。そんな時、仏の世界を知りたく思うことでしょう。彼岸への道は、布施・持戒・忍辱・精進・禅定・智恵の修行をしつつ歩まねばなりません。ですから、彼岸会には、ご先祖を敬って墓参に行かれることでしょうが、それと共にご自身の心のあり様を見直すことも大切です。
 さて、次のようなご意見とおたずねがありましたので、簡単にお答をいたしました。

  問   「祝日に関する法律では、秋分の日はご先祖を敬い、
    死者をしのぶ日で、いろいろな本にお墓にお参りしまし
    ょうと書いてあります。それは確かにそうだとは思うの
    ですが、あの人を敬い、しのべといわれても無理です。
    散々苦労させられたのですよ。そんな人のお墓にお参り
    しなければいけないでしょうか」

  答   「これは大変シビアな問題ですね。あなたがいわれ
    たあの人が、旦那様なのか、お舅さんなのかよくわかり
    ませんが、ご苦労が多かったことだけはお察しします。
    ですが、そんな方でも阿弥陀様はお救いなさろうとして
    いるのです。なのに、あなたが「地獄に落ちろ」と念じ
    ていたのでは、あなた自身が阿修羅のごとく争いの渦中
    に入ってしまいます。苦労させられた上に阿修羅になっ
    たのでは身も蓋もありません。今日は彼岸会なのですか
    ら、此岸のことは忘れて、彼岸の仏さまの見方を味わっ
    てみてはいかがでしょう。」
掲載日:2004年08月06日

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