正月、一月三日のご命日にちなんで、「元三大師(がんざんだいし)さま」と親しんでお呼びしていますが、お名前は良源(りょうげん)といい、また、のちに一条天皇より「慈恵」の諡号(しごう)を賜ったので慈恵大師(じえだいし)ともお呼びしています。天台宗では宗祖の伝教大師(でんぎょうだいし)や、入唐求法巡礼行記(にっとうぐほうじゅんれいこうき)をしるされた四祖の慈覚大師(じかくだいし)など、大師(だいし)の号がつくお方が、ほかにもおいでですが、「お大師さま、おだいしさん」と馴(な)じんでお呼びすることが多いのはこの慈恵大師です。それは「おみくじ」や「たくあん漬け(比叡山では定心房漬(じょうしんぼうづけ)という)」の考案者としても知られ、第十八代の天台座主として、焼失した比叡山の堂塔伽藍の再建整備、学問の興隆、僧風の刷新など天台宗の発展に尽力され、「比叡山中興(ちゅうこう)の祖」と仰がれているからです。また「まず他人を立て、自らを後にすべし」というご遺誡(ゆいかい)にもみられるように、その広いお心の徳により今にあっても幅広く信仰されているからでしょう。
でもそれ以上に多くの人々がおすがりするのは、そのあらたかな霊験による『厄除(やくよけ)け大師』としてのお大師さまではないでしょうか。鬼のような姿で我々の災厄を降伏(ごうぶく)してくださる角大師(つのだいし)や、小さなお大師さまの並んだ豆(まめ)大師などに変化(へんげ)されたお大師さんの護符は皆さんお馴じみのことと思います。
初詣には、ぜひ大師ゆかりのお寺にお参りしてご利益を賜り、今年一年の厄除けを願いたいものです。