天台宗について

法話集

No.19いただきますの心

 お釈迦様は八万四千の法門と言われるように数多くの教えを説かれています。その教えが妙法蓮華経(みょうほうれんげきょう)、観無量寿経(かんむりょうじゅきょう)、阿弥陀経(あみだきょう)など数々のお経です。
 その中でも梵網菩薩戒経(ぼんもうぼさつかいきょう)というお経には十重四十八戒(じゅうじゅうしじゅうはちかい)として多くの戒めが説かれています。その第一番に諭(さと)されているのが不殺生戒(ふせっしょうかい)です。正(まさ)しく「生命(いのち)ある生きものを殺すな」ということです。
 私たちは縁あってこの世に生を受けました。真(まこと)に有難(ありがた)い尊い生命です。この尊い生命を受けたのは決して人間(ひと)だけではありませんね。動物や植物なども同じです。
 ところが私たちは生きていくために食事をいただきます。お米であり、野菜であり、肉であり、魚などですね。これ等はすべて生命をもっています。良いとか悪いとかではなく、私たち人間は他の生きものの生命をいただかなければ生きていけません。
 食事とは、他の生命を自分の生命に変える行為なのです。ですから、必然的に不殺生戒を犯(おか)すことになってしまいます。それでも食事をなくすことはできませんから、不殺生戒をやめようと苦もなくいう人がいますが、それは人間の身勝手というものです。むしろ、不殺生戒をやぶらざるを得ないことを懺悔すべきで、食事の際の「いただきます」には「尊いあなたの生命をいただいて、その生命の分、精いっぱい活かせていただきます」の、痛みを感じ生命を無駄にしない心があるのです。
 
掲載日:2005年06月24日

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