「回向」は「廻向」とも書きます。文字通り、自分が積んだ善根の功徳を、自分のためではなく、他の人のために回(まわ)して向けることを言います。
わかりやすく言えば、ご法事に参列した人々が、それぞれ自分が積んできた善根の功徳の一部を、今日のご法事のために振り向けて下さいと念じて、お参りすることです。もちろん、ご法事を営むこと自体に大きな功徳が在るわけで、それが故人に回向されるのは当然のことですが、同時に参列する人々にも、是非そうした気持ちでおまいりしていただきたいと思います。
ただ、その場合、自分の積んだ功徳を故人に分けてやるというような、驕(おご)った気持ちは捨てなければなりません。
あくまでも、仏さまのお力をお頼(たの)みして、善根の功徳を故人にお供(そな)えさせていただくという謙虚(けんきょ)な気持ちが大切なのです。
お供えといえば、よく「ご供養」という言葉をお聞きになると思います。
これも、回向と同じように、品物や善根の功徳をお供えして、故人の極楽往生の糧(かて)を養うことと言ったらいいでしょう。
さらにまた、「追善供養」という言葉もあります。普通は故人を弔(とむら)うためのご法事の意味に使われていますが、実は追善供養というのは、文字通り、後ろから追いかけて故人のために善い行いをして、それを供養することなのです。
ご法事に参列される時には、是非この気持ちでおまいりしていただきたいのです。