天台宗について

法話集

No.33「願以此功徳 普及於一切 我等與衆生 皆共成仏道」(がんにしくどく ふぎゅうおいっさい がとうよしゅじょう かいぐじょうぶつどう)

 これは、回向文(えこうもん)と呼ばれ、「願わくは此の功徳を以(も)って、普(あまね)く一切に及ぼし、我等と衆生(しゅじょう)と、皆共(みなとも)に仏道を成(じょう)ぜんことを」というような意味で、皆が一緒に悟りを得られますようにと願うのです。
 このほかお香をたくとき、鐘を撞くとき、さらには食事や沐浴(もくよく)といった日常行為の際にも、それぞれ決まった言葉をお唱えします。それらをお唱えすることで、自分の一つひとつの行いが自分のみならず、他の生きとし生けるものに利益をもたらすものとなるよう願いを込めていくわけです。仏道では発願(ほつがん)といって、願いを起こすことにはじまり、願いを生きることに尽きます。
 世の中には、社会と自分は別もので、社会でなにが起ころうと自分には関係がないと思っている人もいます。しかし、社会とは人と人が接すること、例えば、あなたと私が出会うところからはじまっています。私があなたに辛辣(しんらつ)な言葉をぶつければ、気分を害したあなたは周囲にも「負(ふ)」の感情を振りまくことになるでしょう。そして、あなたから「負」の感情を受け取った人は、さらに次の人へとその影響を与えます。こうして私自身の行為の結果はあっという間に、もしかしたら手紙より早く地球の裏側にまで届くかもしれません。そのとき、そこで起った悲しい出来事が、私には責任ないなどとどうしていうことができるでしょう。
 私たちは皆、大なり小なりこの世界の在り方に関わっています。しかし残念なことに、その行為の結果をありのままに知ることはできません。
 だからこそ願いを起こすのです。誰ひとり悲しみの涙に暮れることのない平和な世界に生きられるようにと。
掲載日:2006年11月30日

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