平和の祈り―広島
10年を迎え、決意を新たに
法句経では釈尊の「怨みに報いるに怨みを以てしたならば、ついに怨みのやむことがない」との教えを伝えている。また半田孝淳天台座主猊下も、伝教大師の「己を忘れて他を利するは慈悲の極み也」という言葉を引用されて「この精神が世界平和実現のために重要である」と諭されている。
天台宗では、これまで日本の平和を祈り、そして一日も早い世界平和の実現のために様々な取り組みを行ってきた。それは各教区、団体、個人のレベルでも顕著である。天台宗では、こうした平和への取り組みを、一隅を照らす運動総本部や檀信徒会等とも協力して、より一層充実し訴えていきたいとしている。
戦争犠牲者、原爆犠牲者の回向と悲惨な戦争体験、更には平和の尊さを風化させないために、という思いを持って、三教区はこの法要を毎年営んできた。そして本年でちょうど十年の節目を迎えた。
同日の法要は、午後一時半過ぎより、水尾寂芳延暦寺一山禪定院住職(延暦寺副執行)を導師に、見上知正山陰教区宗務所長、永宗幸信岡山教区宗務所長、及び三教区から約二十名が出仕、来賓の木ノ下寂俊天台宗宗務総長、阿部昌宏天台宗参務総務部長、葉上観行宗議会議員、永合韶俊宗議会議員が参会し、厳かに執り行われた。
法要にあたり見上所長は「我々が今あるのは、戦争で亡くなった方々の尊い命の犠牲があってのこと。そのことを忘れず、戦争の悲惨さ、平和の大切さを後世に伝えていく義務がある。今後もこの慰霊と平和を願う法要を続けていくことが我々の使命だと思う」と語り、法要厳修後に挨拶に立った木ノ下宗務総長も「三教区により、平成十七年に大法会の記念特別事業として始められたこの法要も十年を迎えた。この間、毎年、慰霊法要を続け、平和への祈りを捧げてこられた三教区の方々に深甚の敬意を表したい。戦後六十九年も経てば、悲惨な戦争体験も忘れ去られるおそれがある。若い世代に二度と戦争を起こしてはならないという思いを持って法要を続けねばならない。天台宗としても、三教区の平和への希求の思いを更に拡大すべく行動を起こしていきたい」と述べた。天台宗では、これらの平和を求める活動をより積極的に援助し、推し進めていく決意を新たにしている。