天台宗について

The TENDAI Journal~天台ジャーナル~

天台ジャーナル 第254号

根本中堂大改修への寄付者芳名簿を奉納
-工事の無事円成を祈願-

 祖師先徳鑽仰大法会記念事業である比叡山延暦寺根本中堂大改修に寄付した天台宗内寺院の芳名簿奉納法要が4月2日、根本中堂で奉修された。
 
 祖師先徳鑽仰大法会事務局役員出仕のもと導師を務めた阿部昌宏天台宗宗務総長は、後世に残る大事業に本末一如の精神で報恩を示した浄業をご宝前に奉告し、工事の無事円成を祈念した。

 根本中堂大改修は、平成24年から令和5年3月まで執り行われてきた祖師先徳鑽仰大法会の第二期記念事業として、平成28年に着工。令和9年度の完成を目指し現在も工事が鋭意進められている。

 祖師先徳鑽仰大法会事務局では、この浄業完遂を目的に平成27年に特別寄付金勧募を開始。天台宗内全寺院住職と全僧侶に協力を呼び掛けてきた。令和6年3月8日までの寄付金は、総工費予算の3分の1にあたる金額15億6440万472円にのぼる。

 全教区・北海道管内・4法流の芳名簿は奉書で包まれ木箱に納めて伝教大師御自刻の本尊薬師瑠璃光如来と不滅の法灯のご宝前に安置して奉修。導師の阿部宗務総長は「永く堂内に安置してその善業(ぜんごう)を讃えん」と表白に込めて奉告した。

 法要後、阿部宗務総長は「工事の着工以来8年、この間に全国の天台宗寺院住職と僧侶、檀信徒の皆さま、そして有縁の方々からご懇志を賜り厚く御礼申し上げます。全ての人びとの心の拠り所である『根本中堂の大改修事業』の完成に邁進して参ります」と感謝し、工事の円成へ決意を語っている。

素晴らしき言葉たち -Wonderful Words-

いくら非日本的でも、日本人が作れば
日本的でないわけには行かないのである。

高村光太郎

 詩人であり歌人であるとともに彫刻家、画家であった高村光太郎の言葉です。ですから、芸術分野を指す言葉でしょうが、他の分野にもいえることではないでしょうか。最近、特に話題となっている和食ブームについてもいえると思います。

 伝統的な和食でない中国由来の「ラーメン」やインドを発祥とする「カレー」などは、もとは非日本的な食べ物でしたが、今ではすっかり「和食」となっています。発祥の地である中国には日本のラーメン店が、同じくインドでも日本のカレー店が展開されているそうです。

 明治維新後、日本は先行する欧米の模倣でなんとか国を造りあげてきました。モノづくりでも「安かろう、悪かろう」といわれる時代を経て、「さすが日本製」といわれるほどになり、品質を誇れるまでになりました。

 その過程で、日本独自のアイデアが付け加えられてオリジナルよりも価値が高いものが創造されることになったようです。

 例えば温水洗浄便座なども元はアメリカで開発されたものですが、それを進化させたものだといいます。今では、日本中どこでもみられるようになりました。温水洗浄便座以外でも、モノづくりや食べ物の分野をはじめ、日本の創意工夫が活かされた例が多くなりました。
 
 このところ、経済状況が沈滞し国力の伸びがなくなって久しい日本ですが、この国の得意とする「日本的な」創意工夫をもって生き延びていくことが、これまで以上に求められていると思います。

鬼手仏心

人間性と科学

 気にかかる表現に出会い、引きずっている。日曜の朝、某報道番組の今年の主題『壊れゆく時代』が気にかかっている。

 何かが大きく揺らいで変化が起こっている。考えすぎかもしれないが、日々おこる事象に危険をはらんだ揺らぎを感じている。報道をにぎわすウクライナ、中東ガザ、ミャンマーを含む武力紛争の現在数は200を超え、あるべき秩序を保った国際関係が「壊れて」きているよう感じる。

 超大国の指導者が核戦争を口にするなど、国連や有力国による平和維持機能は危殆(きたい)に瀕(ひん)し、温暖化の深化に伴う気候変動も環境を「壊して」、自然災害を多発させている。

 一方、先端科学技術の軍事利用は進んでおり、その最先端では人工知能(AI)がデータを学習し、人の意思を経ないで新しい知見を構成する「生成AI」となって「人間性なき科学」の問題を提起してきた。

 『壊れゆく時代』に既成的価値が失なわれる中、人間(性)を介在させない科学技術が登場するに到ったといえよう。

 人を含めた大方の価値は経済的なそれで評価される現代、人への支出すらコストか、はたまた投資かと議論されている。本来的社会の互助、相互補完視点の欠落は甚だしいと言わざるを得ない。

 この大地に暮らす人々に不安でなく安心をもたらすためには、人間性の復活、宗教(的)情操をともなった人中心社会の再構築が必須の条件となる。

 鉄腕アトムは、生みの親であるお茶の水博士が胸に「良心回路」を装着した。生成AIなど新時代の科学技術に、「その技術の影響」評価と「あるべき人間性の良心回路」の装着が必要と考え、提案したい。そうしてこそ地球や人類の存続は「壊れず」に保たれると信じるからである。

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